マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

道草随想『小説批評の落とし穴』

 道草随想を更新しました。
 私が望ましいと思う小説批評について触れています。
 左下のリンクからお入り下さい。

 せっかくですから、その主旨に依って批評してみましょう。

     *

 佐々木譲さんの歴史小説『駿女』(2005年、中央公論新社、1900円+税)です。

 舞台は、鎌倉時代初期の奥州――
 源頼朝藤原氏を滅ぼす段です。

 バリバリの歴史物です。

 なのに、主人公は16歳の少女――
 馬を巧みに操り、弓の名手です。
 おまけに、従弟として育てられた少年が、実は源義経落胤だったりして――

 いけません。
 マル太のツボです。ドンピシャです。

 にもかかわらず――
 私は、この小説を途中で斜め読みにしました。
 途中といっても序盤です。つまり、大半は斜め読みですませてしまった――

 なぜか?

 心情描写が少なかったからです。
 外見描写が多い。
 つまり、絵的なのです。

 そういう小説は好みません。
 いわゆる絵的な小説を読むくらいなら、映画やTVをみたほうがいいと考えています。

 小説に絵的な要素は必須です。
 が、それで勝負をかけてはいけない。
 映画やTVに、かなうわけがない。
 そう思います。

 とはいえ――
 それでも最後まで読み通したのは、舞台や主人公が気に入ったからでしょうね。

 どんなに読みづらい小説でも、自分のツボの物語は、逃したくないものです。