自分らしさというものは、消去法でしか探し出せないものだと思っております。
例えば、自分らしい仕事――自分らしさが発揮できる仕事――というものは、仕事を経験して初めてわかるものだということです。
「自分らしい仕事」を求め、メディアで情報を集め、分析し、総合した結果、
(これだ――)
と思って選び取ったものが「自分らしい仕事」である可能性は、実は、ほとんどないのではないか。
「自分らしい仕事」自体が変わっていくということもあります。
最初は嫌々だった仕事が、自分らしさが徐々に変わっていくことで、次第に楽しくなっていく、ということもあるように思います。
つまり、「自分らしい仕事」などは、いくら頭で考えてもわからない、ということです。
実際にやってみて自分らしさの反応をみ、それで、ようやく、わかるものではないでしょうか。
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昨今、
――世界に一つだけの花!
とか、
――ナンバー・ワンよりオンリー・ワン!
といったスローガンが、もてはやされています。
決して悪いスローガンではない。むしろ、優れています。
根底にあるのは、
――頭で考えるな。
と、いうことでしょう。
当たり前のことを、ややセンセーショナルに説いているだけです。
人は誰しも世界に一人です。生まれたときから「オンリー・ワン」です。
そこに立ち帰れといっている。
ナンバー・ワンなど、目指すなといっている。
ナンバー・ワンになるためには頭を使わなくてはなりません。
例えば、メディアで情報を集め、分析し、総合し――そうした努力の果てにナンバー・ワンがある。
そんな努力に、どれほどの意味があるのか――所詮、人を蹴落とす努力にすぎないのではないか――
そういうことを、いっているのです。
極めて真っ当なスローガンだと思います。
これを大仰に解釈する人がいます。
「世界に一つだけの花」や「オンリー・ワン」が、絶世の美女や奇抜な芸術をさすと思い込んでいるようなのです。
優れたスローガンも、最後は受け取る側の問題です。
「世界に一つだけの花」や「オンリー・ワン」の文脈を、もう一度、考えてみる必要があると感じます。
これらスローガンは、シンガー・ソングライター槙原敬之さんの唄に始まります。
法を犯し、地位を奪われ、どん底を経験した槙原さんが、お書きになった唄です。
それが、この国のトップ・グループ「SMAP」に提供されました。