マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

自分らしさ

 自分らしさというものは、消去法でしか探し出せないものだと思っております。

 例えば、自分らしい仕事――自分らしさが発揮できる仕事――というものは、仕事を経験して初めてわかるものだということです。

「自分らしい仕事」を求め、メディアで情報を集め、分析し、総合した結果、
(これだ――)
 と思って選び取ったものが「自分らしい仕事」である可能性は、実は、ほとんどないのではないか。

「自分らしい仕事」自体が変わっていくということもあります。
 最初は嫌々だった仕事が、自分らしさが徐々に変わっていくことで、次第に楽しくなっていく、ということもあるように思います。

 つまり、「自分らしい仕事」などは、いくら頭で考えてもわからない、ということです。
 実際にやってみて自分らしさの反応をみ、それで、ようやく、わかるものではないでしょうか。

     *

 昨今、

 ――世界に一つだけの花

 とか、

 ――ナンバー・ワンよりオンリー・ワン!

 といったスローガンが、もてはやされています。
 決して悪いスローガンではない。むしろ、優れています。
 根底にあるのは、

 ――頭で考えるな。

 と、いうことでしょう。
 当たり前のことを、ややセンセーショナルに説いているだけです。

 人は誰しも世界に一人です。生まれたときから「オンリー・ワン」です。
 そこに立ち帰れといっている。
 ナンバー・ワンなど、目指すなといっている。

 ナンバー・ワンになるためには頭を使わなくてはなりません。
 例えば、メディアで情報を集め、分析し、総合し――そうした努力の果てにナンバー・ワンがある。
 そんな努力に、どれほどの意味があるのか――所詮、人を蹴落とす努力にすぎないのではないか――

 そういうことを、いっているのです。
 極めて真っ当なスローガンだと思います。

 これを大仰に解釈する人がいます。
世界に一つだけの花」や「オンリー・ワン」が、絶世の美女や奇抜な芸術をさすと思い込んでいるようなのです。

 優れたスローガンも、最後は受け取る側の問題です。
世界に一つだけの花」や「オンリー・ワン」の文脈を、もう一度、考えてみる必要があると感じます。

 これらスローガンは、シンガー・ソングライター槙原敬之さんの唄に始まります。
 法を犯し、地位を奪われ、どん底を経験した槙原さんが、お書きになった唄です。
 それが、この国のトップ・グループ「SMAP」に提供されました。