――対立が結束を生む。
というのは、否(いな)みがたい真実です。
例えば――
Aさん、Bさん、Cさんの一派と、Dさん、Eさんの一派とは、どうもシックリこない。
何かにつけ、意見が食い違う。
やがて、両者に深刻な対立が生まれる。
すると、Aさん、Bさん、Cさんの間には結束が生まれ、Dさん、Eさんの間にも結束が生まれる。
両者の対立が激化すればするほど、両者の結束は強まっていく。
そして――
例えば、Aさん、Bさん、Cさんの一派が、Dさん、Eさんの一派を駆逐すると――
今度は、Aさん、Bさん、Cさんの間に不和が起こり、新たに深刻な対立が生まれる。
対立が消えたことで、結束も失われるということです。
こうした対立や結束の力学は、人の気持ちを、ひどく暗澹とさせますが――
同時に、人の愚かさや愛しさに強く感じ入ることもあります。
僕は、自分の小説に争いを持ち込むことが多いのですが、その動機の原点は、こうした対立や結束の力学だろうと思います。
人々は、いかに対立し、結束するのか――
あるいは、いかに融和し、決裂するのか――
そこに、人の社会の不条理の全てが詰まっているように感じます。