マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

紙一重の勝利

 紙一重の勝利でした。
 ワールド・ベースボール・クラシック準決勝・日本×韓国です。
 日本が 6-0 で雪辱を果たしたわけですが、スコアほどの大勝ではなかったと思います。

 決勝点は7回表の福留選手の2点本塁打でした。

 が、この時点では、まだ互角です。

 試合の流れが変わったのは、小笠原選手への死球だったと感じます。
 これが韓国には痛かった。

 とどめは宮本選手の適時打でした。
 2死3塁から奪った4点目が、勝負を決めたと思います。福留選手の本塁打以上の価値があったといえます。

     *

 ――紙一重の勝利

 と述べました。
 理由は、7回の大量得点の契機が福留選手の個人技だったからです。
 しかも、本塁打――

 本塁打は、そんなに打てるものではありません。
 どんなに凄い打者でも、2試合に1本が精々です。

 もし、あれが外野飛球だったら、勝敗は逆になっていたかもしれません。
 逆に、韓国に敗れた2試合においても、今日のような本塁打が飛び出していたら、勝敗は逆になっていたでしょう。

 だからといって、

 ――今日の勝利は運

 と、いいたいのでありません。
 福留選手の本塁打以降は適時打を重ねての得点でした。
 この追加点は、日本が韓国を地力で上回っている証拠だといえます。
 日本は、あのような追加点は許さない――それだけの地力がある――逆に、韓国は、あのような追加点を奪えない――それだけの地力がないのです。

 留意すべきは、この追加点が、あくまで福留選手の個人技によってもたらされたという点です。
 日本の打線が、緻密な戦術や柔軟な組織の力で奪った追加点ではないという点です。

 個人技に頼る野球は、北中米野球といえます。少なくとも、日本野球の特性ではない――
 とりわけ、打者の個人技は要注意です。破壊力は抜群なのですが、確度は低い――

 今日の日本がみせた野球は、たしかに日本野球でした。組織力で固め、ミスをなくする緻密な野球です。
 が、福留選手のホームランが出るまでは、北中米野球です。

 ――紙一重の勝利

 と、僕が感じる理由が、ここにあります。

 日本は、日本野球に徹しきれていないようです。
 少なくとも、2003年11月のアテネ五輪予選でみせた力強さ――日本野球に徹し、当時の長嶋監督が思わず、

 ――完璧な野球

 と、もらしたほどの力強さは、感じられません。

 明後日の決勝戦で、日本野球の真の力強さが漲ることを祈っています。