毎年この季節は、微笑ましい光景に出あいます。
この春、中学を卒業したばかりの高校1年生たちです。
今日も退勤途中の電車の中で――
高1と思しき男の子と女の子とが――
微妙な距離感を保ち、話をしていました。
「そのガクラン、いつまでなの?」
と女の子――
「わかんない。多分、5月いっぱい」
と男の子――
「あ、第一ボタンはずしてる」
「別に、いいだろ」
「バカにしてるんじゃないからね」
「いいよ。バカにして(笑)」
「あは(笑)」
*
いやあ。
ハタできいている僕まで――
なんだか幸せな気分に浸れました。
多分、この3月まで同じ小学・中学に通い――
この4月から、別々の高校に通うことになった男の子と女の子――ですよね。
何より二人の距離感がいい。
友達でもない、恋人でもない、兄妹でもない、姉弟でもない――
こういう距離感が、少年少女の物語を生み出すのだと思います。
僕には2度と味わえない距離感です。
これを味わうには、いささか経験を重ねすぎました。
汚いこと、情けないこと、えげつないこと、おぞましこと、みじめなこと――
まあ――いいですよ。
今さら後悔しても始まりません。
少年の綺麗な思い出は、青い追憶の中にしまっておきましょう。