以前、買って読んだ本を探していて――
それが、いつまでも見つからないと――
妙に腹が立ちます。
今やらなければならないことを全て放り出して――
明日にでも引っ越しをしたくなります。
もっと広い部屋に引っ越せば、大きな本棚を幾つも入れることができ、こんなアホな苦労をしないで済むと思うからです。
一冊の本がみつからないのですよ。
先週からです。
床に平積みになっている本の山々のどこかに紛れ込んでいるはずなのですが――
別に今すぐ必要なわけではないし、絶版になっているわけでもないから、その気になれば、すぐに買い直すことはできます。
が――
それでも気になるのですよね。
なぜでしょう。
読み終えた本は手元に置き、何かあったら、すぐに取り出せるようにしておきたい――
そういう思いが、僕の場合、かなり強いようです。
強欲ですよね。
とても褒められたものではない――
あるいは――
一種の脅迫観念か、とも思うのです。
参考文献の処理に関する脅迫観念です。
何か物を書くときに(とくに学術関係の書物を著わすときに)他人の文献を正確に紹介しなければならないという不文律が、僕にとってはストレスです。
たしかに、著作権の問題はわかります。
他人のアイディアを、さも自分のアイディアのように著わすのは禁じられるべきです。
あるいは、他人のアイディアを紹介すれば、紹介されたほうが利益になる、という話もわかる。
が、いちいち厳密に指摘する必要があるだろうか、とも思うのです。
これは自分の考えたことではない――
他人の考えたことだ――
が、その人の名は忘れてしまった――
それで済む話ではないかと思うのです。
まあ、僕は生来、参考文献の処理にだらしがない男ですからね。
そんな僕が、いくら吠えても、誰も相手にはしないでしょう。
買い直すか!
チクショー!
ああ、腹立たしい。
知の蓄積は、富の蓄積と同じくらい、不毛なことだと思うのですが。