今日も自然について――
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――自然に対し、人間――
と、いわれることがあります。
人間は自然と相反する存在であるとする見方です。
この見方に、僕は疑問をもっています。
高校の頃からです。
――自然物に対し、人工物――
これなら、わかるのです。
人間の登場以前から存在していたであろう事物と人間の意識や知性が作った事物との区別に違和感はありません。
が、自然と人間とを対立させる見方にはなじめない――
人間も自然の一部と思うからです。
今でこそ珍しい考えではなくなりました。
著名な識者が、
――人間こそ自然である。
と力説しています。
が、僕が高校生だった頃は違いました。
小論文の添削などで、よく指摘されたものです。
――人間が自然とは、どういうことか?
と――
(そんなもん、当たり前だろが!)
と思っていました。
人間は普段、人工物に囲まれて暮らしています。
だから、自分も人工物だと錯覚してしまう――それだけのことでしょう。
もちろん、実態は違う。
人間は人工物ではありません。
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こういう話をすると、宗教的見地から、
――人間は神が作った。
と主張する人がいます。
その人は、どうぞ、そちらで議論して下さい。オッカムの剃刀で削ぎ落とされるだけとは思うのですが――止めはしません。
普通に考えれば、人間は誰が作ったものでもない。
太古の昔から、この地球上に厳然とあるーー姿は変えているが、常にある――厳然とあるーー
そういうものだと、僕は考えています。
だから、都市部などでは、人工物に囲まれて暮らす人間自身が、希少な自然なのですね。
人間の意識や知性では、どうしようもない――自然の一部なのです。
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こう考えては、いかがでしょう。
自然は身近にある――
山や海に出かけなくても自然には触れられる――
家族や友人、知人、同僚ーーそして自分自身に――
表象に目を奪われては真理を見落とします。