マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

味わえたかもしれない物語

 本屋にいって、

 ――あ、この小説、面白そう。

 と思って本を買ったとしますよね。
 で、実際によんでみて、

 ――つまんねえ!

 と思ったとする――

 皆さんは、どうお感じになります?

 僕は、意外に腹が立たないのですね。

 その後も、本棚に飾ったりなんかして、わりと御機嫌だったりする――つまらなすぎて最初の数ページでやめてしまった場合でも――です。

 本のデザインが気に入ったとか、タイトルが気に入ったとか、色々と理由は考えられますが――

 結局は、その小説をよむことで味わえたかもしれない物語に未練があるからだろうと思います。

 正確には、「未練」ではなく――
 その「味わえたかもしれない物語」が、その後もずっと気に入っているからでしょうね。

(つまんねえ!)
 と思ったのは、その小説が実際に伝えている物語であって、「味わえたかもしれない物語」ではないですから――

 だから――
 普通の人なら無気味に思うようなことを、僕は平気でやっています。

 もう何年も前に買って、よみはじめ、
(つまんねえ!)
 と思って投げ出した小説なのに――
 時々、手元に取り出してみては、
(うわあ、面白そうだなあ)
 などと思って眺めたりする――そういうことです。

 どんな小説で、そうするのかって?

 それは内緒です。

 僕が書くような小説ですよ。