末尾の言葉が清々しい。
――日本よ、いつまでも平和で穏やかな国であれ。
とある。
作家・半藤一利さんの言葉だ。『昭和史――戦後篇1945-1989』(平凡社、2006年)による。
半藤さんには歴史家の風格がある。
『昭和史ーー戦後篇』の前篇『昭和史1926-1945』(平凡社、2004年)で淡々と――ときに熱っぽく――語る口調が、類書にはないメッセージ性を顕示する。
――歴史は現代へのメッセージである。
との哲学に裏打ちされているようだ。
歴史は主観のせめぎあいである。歴史を客観で語るなどは幻想にすぎぬ。
真に良質の歴史家は、歴史を主観で語る。主観で語ってなお偏らぬ良識を備えている。
半藤さんも、そうだ。
1930年生まれ――
文藝春秋に入社し、『週刊文春』や『文藝春秋』の編集長、取締役を務めた後、作家に転身――
TVなどで識者としてコメントするときは、一見、タカ派の印象を与える。
が、実際はハト派に近い。
タカなのにハトとして振る舞っている――戦後を肌で感じて育った世代の強みであろう。
概して抑制の効いたメッセージが、心を打つ。
「概して」というのは、ときに辛口に激するからで、それが半藤さんの魅力でもある。
『昭和史』には、TVの前の半藤さんが、そのままに収められている。
原稿はテープ録りだそうだ。
さもありなん――
歴史は書くものではないのだろう。
語るものに違いない。