物語の原点は、やはり「語り」にあるのだなと思った。
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高校生の女の子が、とある物語を懸命に話していた。
交通事故で婚約者を亡くした女性の物語である。
女性も、事故を起こした車に乗っていたのだが、運良く助かったらしい。
婚約者を失った悲しみにくれながらも、母親や弟と暮らすうちに、元気を取り戻していく。
が、どうも様子がおかしい。母親や弟の素振りが変なのである。
二人の話をきいていると、自分は死んだことになっている。
(そんなバカな)
と思うが、たしかに、仏壇には自分の遺影が飾られていた。
そういえば、自分の姿は、母親や弟にはみえていないようだ。
それで悟った。
(実は私も、あの事故で死んでいたんだ)
と――
女性は、次第に自分の死を受け入れていく。
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おそらく、TVドラマか何かのストーリーだったと思うのだが――
この物語を懸命に説明している女子高生の語り口が、新鮮だった。
どちらかといえば、ありがちなストーリーである。
少なくとも、さほど斬新な物語ではない。
が、脇目もふらずに喋っている。
きている友人が、少々ウンザリぎみのようですらあった。
物語の原点を垣間みた気がした。