マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

物語の原点

 物語の原点は、やはり「語り」にあるのだなと思った。

     *

 高校生の女の子が、とある物語を懸命に話していた。

 交通事故で婚約者を亡くした女性の物語である。
 女性も、事故を起こした車に乗っていたのだが、運良く助かったらしい。

 婚約者を失った悲しみにくれながらも、母親や弟と暮らすうちに、元気を取り戻していく。
 が、どうも様子がおかしい。母親や弟の素振りが変なのである。

 二人の話をきいていると、自分は死んだことになっている。
(そんなバカな)
 と思うが、たしかに、仏壇には自分の遺影が飾られていた。

 そういえば、自分の姿は、母親や弟にはみえていないようだ。
 それで悟った。
(実は私も、あの事故で死んでいたんだ)
 と――

 女性は、次第に自分の死を受け入れていく。

     *

 おそらく、TVドラマか何かのストーリーだったと思うのだが――

 この物語を懸命に説明している女子高生の語り口が、新鮮だった。

 どちらかといえば、ありがちなストーリーである。
 少なくとも、さほど斬新な物語ではない。

 が、脇目もふらずに喋っている。
 きている友人が、少々ウンザリぎみのようですらあった。

 物語の原点を垣間みた気がした。