30代くらいの女性が、夜の9時頃にバーで食事をとっていた。
サラダやパンだけの軽い食事だった。
ずいぶん痩せている人だったので――
たぶん、それが、いつもの夕食ではなかったかと思う。
そんな女性をみて、
――寂しそうだな。
と感じても、おかしくはなかったはずだ。
が――
不思議と、そうは感じなかった。
(まあ、ああいう生き方もありだよね)
と思った。
*
30代の独身の割合が増えているという。
男性、女性を問わず、増えているのだそうだ。
30代といえば――
20、30年前なら、とっくの昔に結婚適齢期を過ぎている年代だ。
なぜ、いまだに独身なのか?
実は、かくいう僕も30代で独身なのだが――
最大の理由は、
――独身でいても寂しくはないから――
である。
むしろ、楽しい。
結婚し、何かと気を使って暮らすことを考えると、なおさら楽しい。
この楽しさを捨てての結婚となると、よほどの好条件でなければ、その気になれぬ。
もちろん――
子育ての支援体制が整っていないから、とか――
家同士の付き合いが煩わしいから、とか――
それなりに難しい理由を挙げることはできよう。
が――
人間、寂しければ結婚する。
難しい話ではない。
逆に――
結婚して寂しくなりそうだったら、絶対に結婚はせぬ。
夜の9時にバーで質素な夕食を取る女性は、寂しそうにはみえなかった。
結婚している人には寂しそうにみえたかもしれぬ。
が、僕には、みえなかった。
僕には、むしろ、親子で街を歩いているのに一人ひとりが視線を合わせないでいる光景のほうが――
よっぽど寂しくみえる。
そういう結婚だけは、やりたくない。