マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

脱グジャグジャ

 コンビニなどで――
 例えば、1097円の買い物をしたとする。

 このとき、財布が小銭でいっぱいならば――
 端数の97円もキッチリ払いたくなるのが人情だろう。できれば、余計な釣り銭は、もらいたくない。

 さて――
 では、どうするか。

 昔は、こんな感じで、

 ――じゃらっ

   ○ ● ● ○○ ● ● ●
    ○  ● ●  ○ ○ 
     ●   ● ○

 と、出していた。
 ●が10円玉、○が1円玉である。

 こう出すと、たいていの店員さんは、

 ――ひい、ふう、みい

 と、1枚ずつ数え始める。

 時間がかかって、しょうがない。

 よって――
 今は、こんな感じで、

 ――すすっ

   ○○○○  ●●● ●●●
    ○○○    ●●●

 と、出している。

 ――4枚の○と3枚の○が1つずつ、それに3枚の●が3つ、計7枚の○と9枚の●――

 ということが、ひと目でわかるように工夫してある。

 残念ながら――
 僕のオリジナルというわけではない。
 他の客がそうしているのをみて以来、真似をしている。

 お陰で――
 要領の良い店員さんと悪い店員さんとを、確実に見分けられるようになった。

 要領の良い店員さんは、そうしたことに普段から気をかけているらしく、すぐにわかってくれる。
 が、要領の悪い店員さんは、いつまでたっても、わかってくれぬ。

 せっかく、こんな風に、

   ○○○○  ●●● ●●●
    ○○○    ●●●

 きちんと揃えて出してあるのに――
 それらを無造作に手繰り寄せ、こんな風に、

   ○ ● ● ○○ ● ● ●
    ○  ● ●  ○ ○ 
     ●   ● ○

 グジャグジャにしてから、

 ――ひい、ふう、みい

 と、数え始めたりする。

 がっかりする。

 実をいうと――
 これをやる人が、自宅の近くのコンビニにいる。
 もう、かれこれ1年以上は、やっている。

 20代後半くらいの陰気な男性店員だ。

 グジャグジャにされる度に、ため息をもらしそうになっていた。

 が――
 今夜、ついに、その店員さんが気付いたのである。

 初めて、グジャグジャにされなかった。
 こんな風に、

   ○○○○  ●●● ●●●
    ○○○    ●●●

 揃えてある理由が、ようやく、わかったらしい。

(やれやれ――)
 である。