マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

風邪をひく度に思いだす

 二、三日前から風邪が抜けぬ。
 今冬、二度目の風邪である。

 風邪は大病ではないが、ひいているときは、実に厄介だ。
 喉は痛く、頭は重く、鼻はつまり、クシャミは止まらぬ。
 いつもなら楽にできることが、ひと苦労である。集中力は落ち、些細な過ちが増える。

     *

 風邪をひく度に思いだすのが、坂本竜馬のことである。
 幕末の志士として知られ、薩長同盟を斡旋した人物として名高い。

 その薩長同盟が成立した約2年後に――
 坂本は京都の旅館・寺田屋で暗殺される。

 冬の夜だったという。
 坂本は風邪をひいており、体調は万全ではなかった。
 そこを何者かに教われ、殺された。

 本来ならば、簡単に殺されるような男ではなかった。
 坂本は、薩長同盟成立の翌月にも襲われているが、そのときは事無きを得ている。
 風邪の罹患が生死を分けたのであろう。

 享年は30余り――

 その後の日本をリードした伊藤博文大隈重信などと比べても、さほどの年長ではない。
 生きていれば、もう少し違った形で歴史に名を残したかもしれぬ。

 風邪をひき、喉は痛く、頭は重く、鼻はつまり、クシャミは止まらぬ――
 そんな状態で斬り死にした坂本の無念は、いかばかりであったか。

 人の世は残酷だ。