マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

他人の話は最後まで

 大勢の人たちが集まってワイワイガヤガヤと議論を闘わせているときに――
 まれに、妙に説得力のある人がいる。

 他の人たち同じように議論に加わっているのに――
 なぜか、その人だけが、他の人たちとは微妙に異なる雰囲気をもっているように感じられるのだ。

(なんでだろ?)
 と思って、注意深く観察していると――
 次第にカラクリがわかってくる。

 そういう人は、他人の話を最後まできこうとしている。
 決して、話を遮らぬ。

 まれに遮ることはあっても――
 それは、話を遮って話し出そうとする人の話を、遮っているにすぎぬ。

 面白い。

 自分に説得力をもたせようと思ったら――
 他人の話を最後まできこうとすることなのだ。

 自分の話を最後まできかせようとすることではない。

 注意すべきなのは、

 ――他人の話を最後まできこうとする。

 ということは、単に、

 ――他人の話をきこうとする。

 ということとは異なる、ということである。
 賢しげに他人の話をきくだけでは、説得力は生まれてこぬ。

 つねに、自分の意見はいうべきだ。
 そうであってこそ、

 ――他人の話を最後まできこうとする。

 が活きてくる。

 ただし――
 自分の意見は、最後までいわなくてもよい。

 最後までいわなくても、たいていの場合は、伝わっている。

 もし伝わっていなければ――
 誰かが最後まできこうとしてくれるのを、待てばよい。