削って生まれる洗練美というものがある。
ある物事から、余計な装飾をドンドン削っていって、最後に美だけを残す。
こうした考え方は、世界的には一般性がなく、例えば西欧人には容易に理解されぬのだという。
もちろん、ただ削ればいいというものではない。
上手に削っていくには、相応のセンスがいる。
削りすぎや削り不足には要注意だ。
が――
どちらかといえば、削り不足に注意したほうがよい。
削りすぎの心配は、ほとんど、いらぬのではあるまいか。
削りすぎの極致は、
――無
である。
その無にすら、人は、ときに美を感じとれる。
美しいものをみようと思ったら、目を閉じればよい――
美しいものをきこうと思ったら、耳を塞げばよい――
美しいものをつくろうと思ったら、心を虚ろにすればよい――
そう思うことが、たまにある。