そろそろ――
小説に割く時間を増やしたいと思っている。
一度は科学者を志し、結局、文筆に転向したのは――
小説を書くためであった。
小説を書くといっても、僕の場合、小説を書くこと自体には、それほど、こだわりはない。
物語を紡いでいたいのである。
自分の心の内から湧き出る物語に、忠実でありたい。
文筆に転向しなければ、生涯、日の目をみることがなかったであろう物語を――
どういう形でも良いから、世に出しておきたい。
人は、文筆を生業にでもしなければ、紡げる物語は、せいぜい一つである。
自分の人生という物語――それだけである。
僕は一つでは足りぬ。
幾つも紡ぎたい。
事実、幾つも紡いできた――子供の頃から――
結局、これしか打ち込めるものがなかった。
色々と手を出してみたが、結局は、これだけ――
(これだけなんだな)
と思う。
いや――
打ち込めるものがみつかっただけでも――
幸せなのである。
たぶん、そうなのである。