発車待ちの電車に入って座席に座ったら――
向かいに親子連れの姿があった。
20代後半くらいのお母さんに2、3歳の女の子の組み合わせである。
お母さんが割と美人だったので――
それで最初は注意がいったのだが――
すぐに女の子へと、注意が移った。
お母さんにソックリだったからである。
思わず笑っちゃうくらいに――
ソックリだった。
ちょっと離れて座っていた女子高生たちも、
「ちょっと、やだー、かわいいー!」
などと騒いでいたくらいである。
お母さんが美人で――
そのお母さんにソックリの女の子だったので、
――やだー、かわいいー!
となったかもしれないが――
真相は、どうも違ったようである。
似たような顔が、サイズ違いで、上下に並んでいたからではなかったか。
お母さんは、女の子を膝の上に抱いていた。
親子の顔が上下に並んだのは、そのせいだった。
それにしても――
この光景に一番、酔い痴れるのは――
お父さんであろう。
(うらやましい)
と、ちょっと思った。