――作家は書いているときは成長しない。
という。
作家の瀬名秀明さんが、作家の高橋克彦さんの言葉として、紹介されている(『おとぎの国の科学』、晶文社、2006年)
(そうだったのか!)
と思った。
そういう見方があることを、僕は、瀬名さんのエッセイを読むまでは、知らなかったが――
知った瞬間に、得心がいった。
小説書きは、自分の作品を懸命に書いている間は、精神的には停滞する。
なぜか。
小説を書くという行為は、エネルギーを要する。
結構なエネルギーだ。
他のことは、ほとんど何も考えられなくなる。
おそらく――
小説を書き続けているだけで、心が成長する分のエネルギーまで消費してしまうに違いない。
多くの作家が休筆の重要性を指摘している。
つまり――
作家は――
休筆している間に、自分の心を成長させ、新たな境地を開く――
そういうもので、あるらしい。
もちろん――
自分の小説を洗練させるためには――
書き続けることが必要である。
自分で書かないで、人の作品ばかり読んでいても、小説書きとしては成熟しない。
が、書き続けるだけでもダメなのだ。
適度に書き休みを挟まねばならない。
書いては休み――
休んでは書き――
それを繰り返していくしかない。
書いても書いてもダメなときは――
勇気を出して書き休んでみるのが、よいかもしれない。