今日、新幹線に乗り込んで、自分の指定席に行き着いたら――
席の隣で、12、3歳くらいの少年が、股を大きく広げて座って、ふんぞり返って背もたれに寄り掛かり、大きなイビキをかいて眠っていた。
イビキのうるさいこと、うるさいこと――
しかも、ときに僕のほうに状態を傾けてくる。
口を大きく、みっともなく開け、
――ぐご~! ぐご~!
と、うなっている。
もし、あと5年ほど若ければ――
少しは可愛らしいと感じたかもしれないが――
12、3歳では、そうもいかない。
ただ、ひたすらに小憎らしいだけであった。
座席を立ってトイレに行こうとしたときも――
ふんぞり返ったままで、
――ぐご~! ぐご~!
と眠っていた。
思わず苦笑をもらしてしまった。
かなり嘲笑に近い苦笑である。
(このガキが!)
といった感じの嘲笑だ。
一般に――
この年頃の少年は、体は大人並にデカくなっているが、心は幼児並であることが多い。
この少年も――
自分の眠り方が、隣の乗客を、いかに不快にさせているかが、全く想像できていないという点において――
心は幼児並であった。
いくら少年が相手とはいえ――
このような傍若無人ぶりが1時間も続けば、さすがに腹が立ってくる。
それとなく目を覚まさせて、これ見よがしに舌を打ち、にらみつけてやろうかと思ったが――
やめにした。
自分が12、3歳だったときに――
満員電車の中で隣に立っていたサラリーマンの靴を踏んづけたことがある。
今なら、
「あ、すみません」
と即座に詫びて、事なきを得るわけだが――
当時は、そんな知恵がない。
踏んづけたことに気付かない振りをして、そのまま無言で立っていたら、
――ふざけんじゃねえぞ、このガキ!
みたいな顔で、にらみつけられた。
そうなると、「ガキ」としても、面白くはない。
(うっせ~な~。仕方ね~だろ~満員電車なんだから――「ガキ」相手にマジになんじゃね~よ)
などと反発したりする。
その辺の心の動きが、「ガキ」の「ガキ」たるゆえんなわけだが――
もちろん、当人は絶対に気付かない。
だから――
12、3歳ぐらいの少年の傍若無人な所作などは――
完全に無視し、放っておくに限る。