最近、電車に乗ってばかりいる。
なぜかといえば――
それ相応の理由ができたからなのだが――
それはさておき――
*
今日も電車に乗っていたら、突然、
「わぁー」
と息をのむ声がきこえた。
若い女性の集団である。
大きな鞄を手に提げていた。
観光客だろう。
春休み中の大学生か――
何に息をのんだのかというと――
海である。
僕が、よく利用する在来線は、ある区間に差し掛かると、十分に間近で海をみることができる。
彼女たちは、僕が毎日みている光景に、
「わぁー」
と息をのんだわけだ。
僕としては――
その彼女たちの素直な感嘆の声に、
――わぁー。
と息をのみたい気分だった。
忘れかけていた。
そうだった。
海の景色は、人の心を動かす。
毎日みているものほど、よくみえないものだ。
日常に潜む落とし穴である。
ところで――
なぜ海の景色は人の心を動かすのか。
――生命が海で生まれたから――
というのが一つの説だが――
そうでもないだろうと思っている。
僕たちの体は海の中では生きられない。
――水平線がみえるから――
というのが、僕の答えだ。
――この世の果てがみえるから――
というものである。
地平線でも同じ効果があるかもしれない。
が――
どうだろう?
地球の表面の7割は海で覆われている。
地平線よりも水平線のほうが、「この世の果て」としては、しっくりくるように思う。