どうやら、僕は――
度しがたいほどのロマン主義者であるらしい。
*
先ほど、風呂に入ってシャワーを浴びていたら――
シャンプーのボトルが空になった。
だいぶ軽くなっていたし――
買ってから結構な日数が経っているので、
(まあ、こんなもんだろう)
と思って気にもとめなかったのだが――
続いて手にしたリンスのボトルも――
今日で、ちょうど空になった――
まるで、
(シャンプーの後を追うかのように――)
である。
ふだんの僕は、結構どうでもよいところで計算高くなる。
シャンプーとリンスとが交互に空になるのは何となく気持ちが悪いので――
なるべく、同じような時期に空になるように――
日頃から、手に取る量を微妙に調整していたりするのだが――
(なんて無意味な努力なのだ……)
それだけに、今日の「リンスの後追い事件」は――
僕の計算高さを証明するものとして――
もう少しドライにとらえてもよさそうなものである。
が――
そんな風には思うことなく――
ただ、空になったシャンプーの後を追うようにして自分も空になったリンスの――
実に人間じみた切ない振る舞いが――
何とも強烈な印象となって胸の片隅に残った。
そう――
まるで、おしどり夫婦の最期であるかのように――
*
どちらが夫であろうか。
僕が、この後、うんうん唸って捻り出す答えは――
たぶん、シャンプーだろうな――
巧く説明はできないが――
まあ、直感的には明らかでしょう――
日頃の『道草日記』を、注意深く御覧の方ならば――
*
そのようなわけなので――
どうやら、僕は――
度したがたいほどのロマン主義者であるらしい。
十分に、わかっていたつもりでは、あるけれど――
喜んで小説を書く男だからね。