僕は服を買うのが苦手である。
理由はハッキリしていて――
自分の外見に、そんなに興味が持てないからである。
(裸でなければ、まあいいや)
といったイイカゲンさが、つきまとうのだ。
これが、もし――
付き合っている彼女の服なら、正反対である。
彼女の外見には、それなりに興味が持てるので――
たぶん、一生懸命に予習をし、実習をし、復習をするであろう。
予習というのは、
――今どんな服がハヤっているかを事前に調べるということ――
であり――
実習というのは、
――実際に彼女が服を買いに行くのに付き合うということ――
であり――
復習というのは、
――買った服の着こなし方をシッカリと観賞するということ――
である。
*
以上のような話を飲みの席でする分には――
一向に構わないのだが――
素面の席でやろうものなら――
一気に白い目でみられてしまう。
だから――
いつも適当に冗談めかして話をするのだが――
実は、そんなに本音を外していなかったりするから――
厄介なのである。
もっとも――
もう少し本音をいうのであれば、
(そうした予習、実習、復習を、毎回、毎回キッチリこなすほどにはマメになれない)
と、断りを入れるのだが――
*
こんな体たらくなので――
たぶん僕は未だに独身なのである。
そんな自分が、以前は嫌いではなかったのだが――
今は、やっぱり嫌いなのかもしれない。