現代学校教育の最も害悪な点は、
――答えが一つしかない。
と、子供に思い込ませるところにある。
――世の中には多くの問題があるけれども、そのどれにも、正しい答えが一つずつある。
という見方だ。
これほど、子供の性根をひん曲げる思い込みはない。
たしかに、世の中には多くの問題があるけれども――
そのどれにも、正しい答えはない。
唯一絶対の客観的正当性を備えた答えなどは、世の中のどこを探しても、存在しないのである。
が――
正しい答えが本当にないのかというと――
そういうものでもない。
自分にとっての正しい答えは、ある。
より正確にいうならば――
人は、自分にとっての正しい答えを、随時、作り上げていかねばならないのだ。
自分にとっての正しい答えは、他人にとっての正しい答えとは限らない。
自分の正しさが、他の多くの人々の正しさと重なるならば、とても幸せなことである。
不幸にして、重ならないときは、どうするか。
実は、それこそが、教育の最も大切な局面である。
解決策は、原理的には2つしかない。
自分にとっての正しい答えを修正するか、他人にとっての正しい答えを修正させるか――のどちらかである。
これが難しい。
とんでもなく難しい。
子供が体得するには、長大な時間が必要だ。
だから――
教師は、その場合の修正のし方、ないし修正のさせ方を教えるのである。
何が正しいか、正しくないかを、教えるのではない。
何が正しいかを教えたがる教師は――
教育の基本がわかっていない。
自身が、ちゃんとした教育を受けていないのであろう。