歳をとっていくにつれ――
なぜか対人関係が難しくなる。
――ウマがあう、あわない――
といった問題が――
どうにも無視できなくなってくる。
10代の頃は、そうではなかった。
誰とでも仲良くできるような気がしていた。
30代の今でも――
僕自身は、少なくとも初対面の段階では、誰とでも仲良くできるような気がしている。
が、残念ながら――
そのように思える人は、僕くらいの年代になると、だいぶ少ないらしい。
僕よりも上の年代では、なおさらのようだ。
ムリもない。
かくいう僕とて、何回か会った後では、
(あ、この人はダメだ)
と思うことも、ないことはない。
何回か会っているうちに段々と気心が知れてきて……ということは――
まあ、そんなには期待できない。
10代の頃は違った。
辛抱強く付き合っているうちに次第にウマがあってくる、ということも――
ないではなかった。
心は分化しているのだと思う。
歳をとるごとに、心は、それぞれに特定の性質を獲得するようだ。
「分化」は生物学の術語である。
一般に、細胞というものは、分裂・増殖を繰り返していく過程で、それぞれに特定の形態や機能を獲得していく――その変化を「分化」と呼ぶ。