マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

容易には、わかりあえない

 ときどき――
 人と人とが、わかりあうのは、実は、そんなに難しいことではない、と思うことがある。

 双方に、わかりあおうとする意志がありさえすれば――
 意外に容易に、わかりあえてしまうのではないか、と――

 幻想かもしれない。

 いや――
 幻想であろう。

 一般には――
 人と人とが、わかりあうのは至難のわざである。

 双方に、わかりあおうとする意志が生じること自体――
 かなり珍しいことといわねばならない。

 たいていの場合は――
 どちらかが一生懸命にわかろうとし、どちらかが殆(ほとんど)どわかろうとしない――
 そういうものである。

 人と人とは、容易には、わかりあえない。

 わかりあえると誤解した瞬間から――
 悲劇は始まる。

 よく考えれば――
 喜劇である。

 わかりあえるはずがないのに、わかりあえるつもりでいる。

 恋した少女に送った手紙が、何かの事情で、少女に届いていないのに――
 返事が来ないのを、あれこれと思い悩んでいる――
 そんな少年の喜劇に似ている。