夕方、自宅の部屋にいて、ふと気が付くと――
CDラジカセの電源が入っている――
入れた覚えはないのに――
しかも、なぜかカセット・モードになっている――
ここ何年もカセット・テープで聴いたことがなかったのに――
何となく気持ちが悪くなって――
とりあえず、電源を切ってみた。
が――
驚くべきことに――
10秒足らずで、再び電源が入ってしまう――
しかも、ひとりでに――
ますます気持ちが悪くなって――
しばらく躍起になって電源を切り続けたが――
その度に、ひとりでに電源が入っていく――
さらに奇妙なことに――
電源が入ったら、必ずカセット・モードに切りかわるのだ。
CDモードやラジオ・モードに切りかえても――
なぜか、すぐにカセット・モードに切りかわる――
それも、ひとりでに――
(なんなんだよ! ヘンクツなヤツめ!)
と、一人、息巻いた。
さらに不思議なことに――
ひとりでに電源が入ったりモードが切りかわったりするのは、僕がCDラジカセの前を離れたときなのである。
電源を切って、しばらくCDラジカセとニラメッコをしていると――
なぜか、おかしなことは起こらない。
(治ったのかな?)
と思って、CDラジカセの前を離れると――
なぜか、電源がオンになる――
――ぶうん
と音をたてて――
(こんなことって、あるのかよ!)
と思い、いよいよ気味が悪くなって、
(このCDラジカセ、捨てようか)
と思い詰めたときに――
気が付いた。
そのときは、僕の背中の方にはベッドがあって、その上で――
ふだんから滅多に使わないCDラジカセのリモコンが、雑誌類の下敷きになっていた。
雑誌のヘリが、リモコンのボタンを圧迫し続けていたのである。
圧迫されていたボタンは、カセット・モードだった。
(なあんだ)
と思った。