以前の『道草日記』にも書いたように思うが――
人に褒められたときに、きちんとした受け答えを返すのは難しい。
とりあえず、よく見聞きするスマートな受け答えは、
――ありがとうございます。
と、礼を述べることだ。
例えば、
「いつも服のセンスがいいですね」
と褒められたら、すかさず、
「ありがとうございます」
で返す。
以前は、こうした受け答えが最も洗練されていると思って、方々に推奨してもいたのだが――
最近、考えが変わってきた。
実は、これ、
――ありがとうございます。
と返されるほうは、そんなに良い気持ちはしないのである。
実際に人を褒め、このように返されることが多くなって――
何となく気が付いた次第である。
(別にお世辞でいってんじゃないんだけどなあ)
などと思ってしまう。
では、どうしたらよいのか。
難しい。
わからない。
もし、憮然とした表情で、
――そうっすか?
と返されれば腹も立つし――
逆に、やたらと愛想よく、
――そんなことないですよ~!
と返されれば、なぜか損した気持ちになる。
ところが――
褒めるほうは簡単なのだ。
とくに何か見返りを求めなければよい。
褒めた時点で、万事がやむ――
相手の受け答えなどは勘案しない――
これが一番、確かな心得であろう。
では――
褒められたときには、どうするか。
う~む。
難問である。
あまりにも難問なので、
――人から褒められるようなことを一切しなければよい!
とかいう回答も――
あながちバカにはできぬかもしれない。