マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

ヒトの攻撃性、子育て

 ヒトは、この惑星の生物史上、空前の繁栄を遂げている。
 その繁栄を支えているのは、おそらくは、ヒトの攻撃性である。

 ヒトは、自然を攻撃し、他種を攻撃し、ときに同種で攻撃し合いながら、この惑星での進化闘争を勝ち抜いてきた。
 ヒトほど、効率よく自然を破壊し、残忍に他種を排除し、ときに不合理に同種で傷付け合うような生物種は、他に存在しないといってよい。

 ひと口に、

 ――攻撃性

 というが――
 その実態は、もう少し穏やかである。

 おそらくは、

 ――対象を自己の影響下に置こうとする本能――

 が、「攻撃性」の中身である。

 自然や他種や、ときに同種を自己の影響下に置くことで――
 ヒトは、抜かりなく、自己の生存の確実性を追求してきた。

「対象を自己の影響下に置く」という行動は、そういう影響下に置かれる側からみれば「攻撃」であることが多い。

 農耕は、原野側からみれば、原野への攻撃であり――
 狩猟は、獲物側からみれば、獲物への攻撃であり――
 植民地政策は、植民地側からみれば、植民地への攻撃である。

 攻撃性というのは、ヒトにとっては、あまりに本能的で普遍的な性質なので、「攻撃」という言葉で表されること自体に、違和感を覚えてしまう。
 だから、しばしば誤解が生じている。

 が、行動の概要を端的に表すのなら――
 それは「攻撃」でよい。

 ヒトの攻撃性は――
 精神的に満ち足りているとき、あるいは身体的に追いつめられているときには、かげをひそめ――
 精神的に物足りないとき、あるいは身体的に余裕のあるときにこそ、猛り狂う。

 ところで――
 ヒトの本質が攻撃性にあるということを、なかなか認めたがらない人々がいる。

 そういう人たちの多くは、精神的に満ち足りているか、身体的に追いつめられている傾向にあるようだ。

 ヒトが、そのような状態に陥るのは、いかなるときか?

 子育てのときである。
 至適条件下で子を授かった親ほど、ヒトの攻撃性が鳴りをひそめる個体は、あるまい。