芸の価値を決めるのは――
技術である。
小説でも――
芝居でも――
お笑いでも――
確かな技術があって初めて、人の心に届く。
が――
その技術は、芸人の意識によって制御されたものであってはならない。
芸人が無意識に繰り出す技術でなければならない。
もちろん、技術を無意識に繰り出すには――
相応の鍛練がいる。
少なくとも、その芸事に無意識に勤しめるだけの経験は必要である。
そうした中での咄嗟の機転などが、芸にメリハリをつける。
*
僕は、芸事は小説しかやらないが――
時々、何年か前に書いた自分の小説を振り返り――
無意識の技術の迫力に、呆然となることがある。
書いたときの自分には全く意識されなかった技術に気付き――
呆然となる。
そういうときに、つくづく思う。
芸事は制御してはならない、と――
芸人は常に無我夢中がよい。
無意識の技術を発揮させるには――
それしかない。