今回の連立騒動を野球に喩えるならば――
こうである。
9回裏、2死満塁――
民主の打席には4番小沢――自民のマウンドにはリリーフ福田――
民主は試合の終盤で自民を1点差に追いつめている。
ヒットが出れば逆転サヨナラだ。
そこへ、報道席からグラウンドに闖入した者がある。
透明マントを羽織っており、姿はみせない。
その者はマウンドで囁いた。
「福田くんよ。小沢くんは、もし四球で塁に出してくれるなら塁上で牽制アウトになってもいい、といっている」
また、打席でも囁いた。
「小沢くんよ。福田くんは、もし塁上で牽制アウトになってくれるなら四球で同点にしてもいい、といっている」
1点差の満塁だ。
小沢が四球を選べば押し出しで同点となり、その後、塁上で牽制アウトになれば試合は延長戦へ入る。
「お互い、損な話ではあるまい?」
というのが、透明マントの言い分であった。
たしかに、致死的な決着の延期は双方に魅力的であった――いや、最終回を守る自民にとって、より魅力的であった。
よって、まずピッチャー福田が、この話に乗った。
バッター小沢も無視はできなかった。最近、打撃の調子が今一つなのだ。
(ここは同点に追いつくことが肝要だ)
と考える。
ところが、ベンチから「勝負しろ!」と声がかかった。
いわれるままに打席に戻ったが、内心は穏やかではなかった。
(俺はチームのためを思っているのに!)
そこへ、報道席からヒソヒソ話が漏れてきた。
「小沢は勝負を避けたがっている」
カチンときた。
そういえば透明マントは元々は報道席にいた――
「俺に代打を!」
小沢は憤然と打席を外す。
それが、あまりに唐突であったので――
ピッチャー福田の「ビックリした」も本音であった。
さて、以上の中で最も不見識な者は誰か。
もちろん、勝負を避けようとしたピッチャーやバッターにも非はある。
が、最大の非は透明マントを羽織った者にあろう。
幸い、このマントは年代物で、あちこちが破れかかっている。破れ目からは「読売」のロゴが見え隠れした。
以上は、僕が作り上げた喩え話だ。
真相はわからない。
とはいえ――
もし、今回の連立構想を仕掛けたのが本当に読売新聞社の渡辺氏であるならば、由々しき問題だ。
そういうことは政治家になってからすべきである。