午後、仙台の街を歩いていたら――
急にクロワッサンを食べたくなったので――
クロワッサンが食べられそうな専門の喫茶店に行って――
カフェラテと一緒にクロワッサンを注文した。
最近、脂っこい物が美味(おい)しく感じられる。
僕は、元々、油っこい物が大好きで、(安室奈美恵さんに因んだ)「アムラー」ならぬ、
――アブラー
との異名をとっていたのだが――
三十路に入って、さすがに自分の健康に自信が持てなくなったので――
去年の夏くらいから、意識して脂っこい物を控えるようにしていた。
その反動が、きたようである。
困ったことだ。
クロワッサンなんて、バターの塊みたいなものである。
これが美味しく感じられるというのは――
要注意だ。
放っておくと――
自分の体も、アっという間にバターみたいになってしまう。
が――
クロワッサンは、幼年時代の思い出だ。
4歳から6歳まで――
僕はヨーロッパで暮らしていた。
クロワッサンの香(こう)ばしい薫りは――
向こうで覚えたものである。
幼年時代の郷愁も手伝って――
クロワッサンへの想いは、なかなかに断ちがたい。
カフェラテを片手に頬張るクロワッサンは格別の味である。
バターの塊を頬張ったので、僕の血管は、健康問題の観点からは、たぶん間違いなく、多少なりともダメージを受けるのだが――
食べたい物を食べる喜びが、縮みかける寿命を伸ばすようにも感じられる。
だから、
(どうすりゃいいんだよ)
と悪態をつきたくなるのが人情というものだが――
そこは、グっとこらえるのがよい。
健康問題というのは――
一歩、間違えると――
損得勘定に堕す。
損得勘定に汲々とするのが、たぶん一番、健康に悪い。
基本的には、食べたいときに、食べたい物を食べる――
が、バランスには考慮をし、特定の好物ばかりに偏ったりすることなく――
そういう食生活を、心掛けるしかない。