最近、本を枕に居眠りをします。
使っているのは厚い医学書です。
最初は抵抗があったのですが――
何度か繰り返しているうちに、
(わりと快適じゃないか)
と思うようになりまして――
ちょうど良い高さなのですね。
肩が凝らなくて、よい感じなのです。
「最初は抵抗があった」と述べたのは――
10代の頃に、辞書がもっている権威の話をきかされていたからでしょう。
――権威というものは、ふつう、人間がもっているものだけれども、まれに事物がもつこともある。
その具体例の一つが辞書だというのです。
「だって、辞書を踏んづける気になりますか?」
と訊かれ、
(たしかに、そうかも――)
と思うようになりました。
その後、家に帰って――
試しに、辞書を踏んづけてみたのですが――
たしかに、あまり良い気持ちはしませんでした。
ちなみに――
そのときに踏んづけたのは、英語の辞書です。
当時は英語が大嫌いでして――
今も大嫌いですが――
(英語なんか消えてなくなれ!)
と念じながら踏んづけたのではなかったかと記憶しております。
嫌いな英語の辞書ですら、踏んづけて気分が悪くなったのですから――
とくに嫌いでもないドイツ語の辞書とか、当時から好きだった国語の辞書とかを踏んづけていたら、もっとイヤな感じがしたでしょうね。
もちろん――
踏んづけるのと枕にするのとでは、だいぶ意味合いが違うとは思いますが――
でも、どちらも、少なくとも礼儀正しい態度ではないですよね。
だから、医学書を枕にするのが、ためらわれたわけですが――
よく考えてみると――
医学書だったのが、よくなかったのかもしれません。
もし、これが青春小説とかだったら――
例えば、若い女の子が何事にも前向きに頑張る青春小説とかだったら――
そんな女の子に膝枕をしてもらうような気分になれたのかもしれません。
……
……
今日の『道草日記』は――
ぜんぶ冗談ですよ。
念のため――(笑