マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

人として大事なことが

 実は、

 ――機能性胃腸障害

 ではなかったんだそうですね。

 ――潰瘍性大腸炎

 だったとか――

 昨秋、突然に辞任した安倍前首相の話です。

 今月10日に発売された月刊誌『文藝春秋』に安倍前首相が手記を寄せ、その中で明らかにされていることだといいます。

 当初から噂としては囁かれていました。
 その背後にあったものは、

 ――いくら何でも機能性胃腸障害で辞めるっていうのは、おかしくないか?

 という疑念であったと思います。

「機能性」というのは「非器質性」という意味です。

「器質性」というのが「見た目にもわかる異常の」くらいの意味ですから――
「非器質性」というのは「見た目には正常な」くらいの意味です。

 つまり、「明らかな病変部位を指摘できない病気」ということですね。
 精神的ストレスなどで引き起こされると考えられています。

 ということは――
 安倍前首相は精神的ストレスで辞めた、といいかえることもできるのです。

 なので、
(それはないだろ)
 と、強く憤った人は、決して少なくなかったはずです。

 僕もそうでした。

 が――
 潰瘍性大腸炎なら話は別です。

 これは難病です。

 その名が示す通り、潰瘍を伴う胃腸の炎症ですが――
 原因はハッキリとはわかっていません。

 よって、根治の手立てもわかっていません。

 潰瘍性大腸炎で首相を辞めたのであれば、納得できないことはありません。
 やむを得ないことです。

 とはいえ――
 なぜ正直に病名を公表しなかったのでしょう。

 たしかに、政治家は、なかなか持病を語れないとはいいます。
 下手に語ると政治生命を縮めてしまうからです。

 が、あの場では語ってほしかった。

 潰瘍性大腸炎生活習慣病とはみなされておりません。
 若い頃に発病し、その後、終生、付いてまわる病気です。

 この病気に罹ったことで、不摂生や不注意を責められることはないはずです。

 たしかに、政治生命は傷ついたでしょう。
 政治家として大事なことを失ったかもしれません。

 が――
 結局、こうして公表することになったのです。

 あのときに、きちんと公表していれば――
 人として大事なことが守れたのではなかったでしょうか。