人間は矛盾の塊ですね。
しかも、他人の矛盾ほど、よくみえる。
本当は自分だって矛盾の塊なのですが――
それは、みえにくい。
だから、人間同士で諍(いさか)いが絶えないのでしょうね。
どちらも、
――自分こそは正しい。向こうが間違っている。
と思っていますから――
人間は矛盾の塊であるということを受け入れるには、どうしたらいいのでしょうね。
なかなかに難しいことです。
ちょっとやそっとのことでは無理でしょう。
もしかしたら――
矛盾それ自体を、なるべく、あぶり出さないようにするのが、よいのかもしれません。
他人の矛盾も自分の矛盾も、です。
矛盾というのは――
一度、気づいてしまったら、なかなか見過ごせないものです。
だったら、最初から気付かなければいい。
とくに他人の矛盾は、これに限ります。
ときどき、他人の矛盾に人間の根源的なおかしみを感じとる人がいます。
人間の愚かさを達観している人です。
そういう人は、他人の矛盾を笑って許すのですね。
そうすることで、周囲を安心させられる。
当然でしょう。
――矛盾だ! 矛盾だ!
といって騒ぎ立てる人よりも、
――矛盾してるよ、しょうがねえな!
と笑っている人のほうが、落ち着いてみえますから――
が、多くの人は、そんな風には笑えない。
だから、周囲をハラハラさせる。
それでは困るので――
気付かないふりをする――あるいは、本当に気付かない――
それが人間の矛盾を受け入れるための次善の策でしょう。
ただし――
あまりに度が過ぎると、感性が鈍っていきそうです。
少し注意したほうがよいかもしれません。