『覆面作家企画3“冬”』Cブロック(終盤)の感想です。
覆面作家企画3“冬”
http://fukumennkikaku.web.fc2.com/3/index2.htm
覆面作家企画については、2008年2月1日の『道草日記』を御覧下さい。
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C9 私と私の黒のこと
「私」が、日々、痛感しているであろう「狭さ」や「暗さ」の圧迫感が、よく伝わってきました。おそらく、「私」は想像力が豊かすぎるのです。あるいは言葉のセンスに優れすぎている――
目の見える人が日常的に知っている世界を、目が見えないなりにも、かなり生々しく想像できてしまうのでしょう。その感覚が苦痛をいや増してしまう――
不憫な人だと感じました。
「私」がAの小説を批評するくだりには、ニヤリとさせられました。
Aが書いている小説は、つまりは、作者さまの書かれている小説で、それを否定的に評価する「私」は、いってみれば自分の創造主を否定的に評価しているようなものでして――
今、気づきましたけど――
この「A」という人物、実は作者さま御自身なのでしょうかね。
C10 てるてる坊主の気持ち
冒頭から、
(ウソつけ!)
と難癖をつけたくなった小説です(笑
(てるてる坊主が喋るかよ!)
と――(笑
でも、そこがいいんですよね。
こんなふうに冒頭から明らかに「ウソ」とわかる物語なのに、読者の興味を最後まで引っ張っていく技量は、並大抵のものではありません。
智沙の言動や振る舞いには一般的な少女らしさが弱く、そのキャラクター造形には、正直、違和感を覚えましたが、作品の「ウソ」を完遂させようと思ったら、こうした造形で押し通すしかなかったでしょうか、むしろ、これによって、作品全体の雰囲気が巧みに守られているように思います。
C11 ふりさけ見れば春日なる
オフラインで、僕より10歳ほど若い友人が、この作品を僕のものと推理してくれました。
ありがたいですね、こんなに素晴らしい作品と間違えてくれて――
たしかに、いかにも僕が目指しそうな作品なのですよ。本歌取り風のタイトルといい、女性視点の一人称といい、方言の工夫といい――
もっとも、僕が本気で目指しても、たぶん、この作品の半分の出来映えにもならなかったでしょう。
正直、
(これが書けたら最高だな)
と思いました。
C12 三つ葉
この作品も、僕の作品であると推理して下さった方々がありました。
大変に嬉しく思います。
いいお話ですよね。
正体不明の食事処で、年端もいかぬ少女に慰められる中年男――その逢瀬によって自分の父性に目覚める話だなんて、にくらしくも奥ゆかしい演出ではありませんか。
たぶん、現実にはゼッタイにありえない話ですけれど――でも、だから、いいんですよね。ありえない話だからこそ、虚構で表す価値が生まれるのです。
少女趣味のワイセツを上品に追求されているところが、実に素晴らしい!(笑
「上品に」というところがポイントですよ。上品なワイセツは文芸の真骨頂ですからね。