『覆面作家企画3“冬”』Cブロック（中盤）の感想です。
覆面作家企画3“冬”
http://fukumennkikaku.web.fc2.com/3/index2.htm
覆面作家企画については、2008年2月1日の『道草日記』を御覧下さい。
＊
C5 クウジュ
作者さまは女性でしょうか――といいますのは、もし、男性だったら、主人公を少女にしていると思うのですよ。
少なくとも僕なら、断然、少女です。
少年が天気を左右するというアイディアは、他のブロックにも見受けられましたね。A4の『アタタカイアメ』です。
そちらと比べると、この作品は、ずばり背徳がテーマでしょう。しかも、背徳が物語の世界を一部はみ出しているように思えるところが興味深い――
もちろん、少年が物語の中で受けている仕打ちも十分に背徳的ですが、より気になったのは、作者さまの動機でした。なぜ、このようなお話を思いつかれたのか。
女性が少年に抱く嗜虐趣味の典型が暗示されているように感じました。それが、この作品の隠れた主題ではないか、と――
そう思って読み返すと、例えば看護師の描写には凄みが感じられます。
C6 ボクらの、冒険前夜。
長い物語の序章を切り出しこられたのでしょうか。それとも、物語の佳境を読者に預ける試みでしょうか。どちらにせよ、読者の想像力を巧く刺激していますね。
空の彼方で、どんな顛末が用意されているのでしょうか――あるいは、どんな顛末を用意すればいいのでしょうか。
僕なら、やはりコテコテの正統ファンタシーを用意しますね。例えば、陸地のような雲の上を渡り歩く怪物退治奇譚みたいな路線です（笑
C7 鏡よ鏡
笑顔がぎこちない女の子のお話ですね。
実は、僕も笑顔がぎこちないのです。先日も、従妹に「カメラの前で笑わない」と指摘されたばかりです（笑
ムリに笑って引きつった顔になるのがイヤなのですね。
もちろん、自然に笑えるなら、それに越したことはありません。実際、笑顔は人間関係を潤滑にします。
だから、最後に自然な笑顔を取り戻せた女の子には共感できました。
C8 Deserter's 45 minutes
素材が上手に料理されているなと感じました。
組織に忠実な人間も、最後は個人に還るというのは、よくあるお話ですが、そこに男女のエロスやタナトスが溶かし込まれていく趣向は、僕の好みです。
タイトルは、直訳すると「逃亡者の45分間」ですかね。あるいは、もう少し踏み込めば「脱走兵の45分間」となります。
和文でなく英文である点が、無頼風の男によって語られる物語の雰囲気を、よく伝えています。
