覆面作家企画3“冬”の感想です。
覆面作家企画3“冬”
http://fukumennkikaku.web.fc2.com/3/index2.htm
覆面作家企画については、2008年2月1日の『道草日記』を御覧下さい。
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B7 コバルトブルーの骨
(これ、もしかして実話を基にしているんじゃないのかな)
と感じました。
最初はファンタシーの類いと思ったのですよ。実際、その体裁は最後まで保たれているように感じます。
が、「僕たち」が「コバルトブルーの骨」を埋めたあとに「土の中に空が育つんじゃないか」などと思いを馳せる場面をみて――少し違った印象を受けました。
もしかして、作者様は実際に子供の頃に「コバルトブルーの骨」のようなものを手にとられたのではないでしょうか。
そして、それを基に、あれこれと空想を楽しまれた――
ちなみに、僕自身も、子供だった時分に、友人たちと連れ立って、空き地に散らかる粗大ゴミなどを物色し、
「これは宇宙船のエンジンだ」
とか、
「これは怪獣メカの右足――」
とかいって遊んでいましたよ(笑
B8 青空をさがして
妖怪たちのコミュニティーが活き活きと描かれていますね。
妖怪たちの呼称表記にも注意が払われているようで、独特の存在感が伝わってきました。
(妖怪たちの暮らしぶりって、きっと、こんなんだろうな)
と納得させられましたよ(笑
物語の結末が天気の言葉に帰結されたのは、やや強引に感じたのですが――
もしかしたら、物語にキッチリとケリをつけたいとする作者様の強い御意志の現れかもしれませんね。
B9 紫に染まる
魔王に最終決戦を挑む勇者が、つかの間の安らぎを楽しんでいる場面でしょうか。
よいアイディアです。「最終決戦」の直前を描き、「最終決戦」自体は全く描かない――その着眼が、僕は好きです。
昼と夜とが瞬時に切り替わるなどは、かなり人為的な世界像ですが――それが、一昔前のロールプレイングゲームを思わせます(笑
もちろん、作者様の演出でしょう。
――そういう世界であっても、懸命に生きる命は存在している。
というのが、作者様の御主張ではないでしょうか。
B10 君の手、そして始まりの空
三人称なのに一人称みたいなのですよ。主人公の少年の情念が、地の文のあちこちで迸(ほとばし)っています。少年の想いが、切ないくらいに伝わってきました。
三人称なので、情景の描写もシッカリと書き込まれています。例えば、
――白い壁を舐め、黒い屋根を舐め、柱を這い上がり、包み込んでいる。
などの表現は、三人称だからこそ活きるのであって、一人称では逆に興が醒めていたでしょう。
一人称みたいな三人称でありながら、三人称の利点は十分に意識されている辺りが巧いですね。
B11 青空の涙
「神様」や「神官」の直後に「車」や「エアコン」が出てきたので、
(え、なになに?)
と面食らってしまいました。
ボーっと読んでいたら、あっという間に取り残されてしまいますね(汗
はるかの絶対的な強者ぶりに翻弄される透の様子が、どことなく淫靡です(笑
男性の僕には、今ひとつピンとはきませんが――作者様は女性かな?
B12 Aurora Breakup
脱帽です。
この作品のストロング・ポイントは、一回よんだだけではわかりませんでしたが、二回よんで、よくわかりましたよ。
何といってもバカバカしさが突き抜けています。中途半端なバカバカしさは物語の雰囲気を壊しますが、ここまで弾けたバカバカしさなら、十分に味わえますよね。
女の子とロボットとが将棋盤を挟んで絶叫し合っている場面は、シュールすぎて笑えます。