何をやっても上手くいかないときというのがありますね。
よかれと思ってやったことが、すべて裏目に出るとか――
とくに、人間関係でそういうことが続くと、
(はあ~)
と思わず溜め息をつきたくなります。
まあ、自然なことなのですがね。
世の中の難事は、人間に始まり、人間に終わる、といっても過言ではないでしょう。
あるいは――
ただでさえ難しい事態を、さらに難しくしているのが人間である、と――
*
いわゆる「世捨て人」と呼ばれているような人たちが捨てているのは――
「世」ではなく――
人間だろうと思っています。
自分も含めて、およそ人間的なるものすべてを捨てているのが、世捨て人だということです。
世の中のことというのは、結局は人間のことですよ。
人間の欲望とか野心とか憧憬とか慈愛とか――
生まれ出て、育ち、ただ歳をとって死んでいくだけが人間ならば――
「世」という概念は、単純すぎて、まったく取るに足らないものになっていたでしょう。