計画と実践――ということが、ずっと気になっています。
計画というのは、学識さえあれば、完璧にこなせるものなのですね。
確かな思考と豊かな知識とが、常に計画の中身を優れたものに保つ――あるいは劣ったものにしない――
が、実践というのは、学識さえあれば何とかなるようなものではありません。
どんなに学識のある人でも、学識しかない人は、実践の場では無力です。
仮に、確かな思考と豊かな知識とに基づいて完璧な計画を立てたとしても、その計画を実践する段階で要求されるのは、別次元の要素だからです。
例えば、鋭利な直感や鋭敏な感性が要求されます。
あるいは、思考の柔軟性や知識の相対化も必要でしょう。
何よりも経験が求められるのです。
「経験」というのは、無形の知識のことですね。
言葉や記号では決して表しえない「知識の亜型」です。
僕は、学識については、それなりにトレーニングを積んできました。
何しろ、30歳まで学校にいたくらいですからね――大学という名の学校に――(笑
ですから、計画を立てるのは得意なのです。
スラスラできる――中身にも自信をもてる――
が、その計画の実践となると、
――ハタ
と立ち止まってしまうのです。
そのときに、心の奥底で覚えている感情は、不安です。
――計画通りに巧くいかない場合はどうしよう?
という不安です。
なまじ計画の中身に自信があるものだから、実践経験の不足によって、その計画が頓挫することを恐れるのですね。
十分に実践経験を積んでいれば、逆に、
――計画通りにいかないほうが面白い。
くらいに構えていられるのでしょうが――
計画よりは実践を――
学識よりは経験を――
それが最近のマイ・スローガンになりつつあります。
ただし――計画あっての実践であり、学識あっての経験であって――
計画なき実践は無謀であり、学識なき経験は独善であることも、否定はできません。
10代や20代の人たちに、そこを勘違いされるのは、痛いのですが――
どうしたらいいんでしょう?
難しいところですね。