女の色気というものは――
男が、自分の主観の中で、勝手に練り上げるものだと考えています。
客観的な色気というものは、たぶん存在しない――
男が描く男の内面世界においてのみ、女の色気は存在するのです。
だから、女性が「女の色気」を身に付けようと思ったら――
男の内面世界に精通しないといけない――
女性が女の視点に止まる限り、「女の色気」は永遠に獲得できないことでしょう。
もちろん、女性だけに感じられる女の色気というものもあるのでしょうが――
そういうのは、やはり例外とみなしたほうがよいでしょう。
ところで――
男の内面世界というのは、どういう世界でしょうか。
簡潔にいえば、
――虚構性と物体性とで満たされている。
と、僕は考えています。
「虚構性」というのは、正しくは「非現実性」です。
「反実仮想性」といってもよい――
「物体性」というのは、「女性の身体を物体とみなす」ということです。
「女性を人形とみなす」と言い換えてもよいでしょう。
つまり、極端な話――
男というものは、女性に、非現実的なシチュエーションで、人形らしく振る舞われたら、コロっと騙されてしまうのです。
――この人を、一生、傍に置いておきたい!
などと思ってしまう――
凡百な男が銀幕の女優に、しばしば本気で恋焦がれてしまうのは、そうした事情によるものでしょう。
「騙される」と述べたのは――
「一生、傍に――」なんてありえないからです。せいぜい「4~5年、傍に――」――
それでも「一生、傍に――」と本気で信じ込んでしまうのが、男の性質といえましょう。
それが、男の欲望の発現であり、女の色気の効果である、といってもよいのです。
したがって――
「女の色気」は、男の内面世界で完結しています。
男に始まり、男に終わる――
そういう精神現象の1つが「女の色気」でありましょう。
つまり、「女の色気」を追求することは、男の内面世界を探求することです。