――色気よりも猥褻(わいせつ)に興味があったことに気がついた。
というようなことを――
きのうの『道草日記』で述べました。
この12年ほどの間――
僕は、『道草日記』の題材として、
――色気
をさかんに選んできましたが――
実際に僕が気にしていたのは――
色気ではなくて、
――猥褻
のほうであった――
ということですね。
……
……
――猥褻とは何か。
この問いは――
なかなかに深遠です。
10年以上前に、
――猥褻の感覚は、男が女性の体に物体としての性質を見出すと、強まる。
といったことを述べたことがあります。
女性の体を、人体ではなく、物体としてみるとき――
男は、その女性の体に猥褻の感覚を抱いている、と――
……
……
いま振り返ってみて、
(たしかに、そうかもしれない)
とは思います。
が――
女性の体に物体としての性質を見出すと、なぜ猥褻の感覚が強まるのか――
という疑問が残ります。
なるほど――
たしかに、少なくとも男の視点では、人体を物体とみなせば、猥褻な感覚が生じるような気はします。
が――
なぜ人体を物体とみなすことが、それほどに重要なのか――
そこが――
よくわかりません。
……
……
この疑問に――
当時の僕は――
納得のいく答えが見出せず――
それゆえに――
この「猥褻とは何か」という問いについて考えることを、先延ばしにしていたように思います。