昔から、
――早食いは太る。
と、いわれていますね。
――早食いをすると、満腹中枢が働く前にドンドン食べてしまうから、どうしても食べすぎになって、それで太る。
というふうに、説明されていましたが――
最近、
――ただ早食いをするだけでも太る。
という見方が出てきたようです。
つまり、
――食べる量が同じでも早食いをすると太る。
というのです。
体重は純粋に食べる量だけに依存するというのが、これまでの医学常識でしたから、「ただ早食いをするだけでも太る」という見方は、一見、非常識です。
が、全国紙の生活面などで堂々と紹介されたりしているのですね。
――早食いをやめるにはどうしたらよいか?
といったキャンペーンまで張られたりしています。
そうした記事を読んで、
――やべえ、オレも早食いだ。
って気をもんだ読者も、少なくはなさそうです。
とくに男性には、年代を問わず、早食いの人が多いようですからね。
かくいう僕にも、その傾向があります。
だから、そうした記事を読んだときに、
(放っといてくれ!)
などと思ったりもしたのですが――(笑
とはいえ――
食べ方が食後のホルモンのバランスに影響を与えると仮定すれば、医学的に説明できないこともないのですね。
食べる量と体重の増加量とを調整して解析すれば、統計的に有意な数の被験者を早食いの有無だけで篩(ふる)い分けることも、不可能ではないでしょう。
つまり、「ただ早食いをするだけでも太る」というのは、それなりの医学研究――疫学研究――に基づいた知見のようです。
まあ、今日のところは、その知見の検証はさておき――
「ただ早食いをするだけでも太る」が本当であれば何がいえるのかについて、考えてみましょう。
実は、
――早食いを敵視しすぎないほうがいい。
という結論になるのです(笑
*
食料が豊富な現代日本社会においては、「太る」は悪になっています。
肥満が種々の病気をもたらすからです。
が、太古の昔では、「太る」は至難の業であったと考えられます。
大量の食料にありつくことが稀であったからです。
つまり、「太る」とは「効率よく栄養を吸収する」と同義であり、「太る」ことは悪ではなく、むしろ正義であった、ということになります。
人類史を俯瞰(ふかん)するとき、実は、そうした太古の昔の状況のほうが、ヒトにとっては、はるかに馴染み深いことに気づきます。
人類が誕生する以前の進化史を考慮すれば、今の日本社会の状況などは、一瞬の夢です。
つまり、ヒトの体は、太古の昔の状況に合わせて設計されていると考えられます。
ということは――
もし、「ただ早食いをするだけでも太る」というのが本当であるならば――
「早食い」は、「太る」のが困難であった状況において、その困難を可能ならしめた素晴らしい食べ方である――
ということになります。
つまり、
――早食いさまさま
です(笑
人類の祖先は、早食いの特技を体得し、進化の自然淘汰の圧力に打ち勝ってきた個体ばかりであったはずです。
よって、現代日本社会において、男性の多くが、ついつい早食いをしてしまうのは、自然な成り行きであるといえます。
ヒトが早食いをするのは当然です。
であるならば――
早食いを、そんなに敵視しなくてもいいんじゃないでしょうか。
むしろ、敵視しすぎるとバチが当たるかも――(笑