映画評論家の水野晴郎さんが亡くなりました。
昨日の午後のことだったそうです。
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僕の物心がついたときには――
すでに、TVのブラウン管の中で、こう仰っていました。
――いやあ、映画って本当にいいもんですね。
日本テレビ系列の映画番組での決め台詞です。
当時は、それを何とはなしにきいていましたが――
今にして思うと、半端ではない重みが感じられます。
つまり――
どんなに駄作にみえる映画であっても、
――いいもんですね。
と、おっしゃっていたわけです――
全国のお茶の間に向かって――
まさに、映画への無償の愛ですね。
水島さんが特定の作品を非難するところなんて、ちょっと想像つきません。
おそらくは、たとえ、どんなに酷い作品であったとしても――
どこかしらに良い点を見出され、あのニコニコしたお顔で、お褒めの言葉をおっしゃっていたのだと思います。
そういう水野さんのご姿勢は、映画の製作に携わる人々を甘やかす一面があったかもしれません。
映画人の成長を阻害していたかもしれません。
が、映画は芸術ですよね。
業務や学問ではありません。
芸術は、中途半端なプロフェッショナリズムによって、かえって衰退していきます。
逆に、アマチュアリズムにドップリ浸かることでみえてくることもあります。
芸術の終点には、プロフェッショナリズムがあるのかもしれませんが――
始点にあるのは、いつだってアマチュアリズムです。
水島さんの決め台詞は、芸術の基本に忠実だったのです。