学校では、易しい問題から難しい問題までを、順々に解く訓練を行いますが――
社会では、そんな訓練は、ほとんど役に立ちません。
社会でものをいうのは、易しい問題と難しい問題とを見極めるセンスだと思っております。
「見極める」が大事なのであって、「解く」は、それほど大事ではないと思うのです。
だいたい、社会では、易しい問題は解く必要がなかったり、難しい問題は解けなかったりすることが、ほとんどです。
社会では――
易しい問題は、どうしても解かなければならないときにだけ解けばよく――
難しい問題は、十分な覚悟を決めて真剣に取り組まなければなりません。
社会で活発に生きていくには――
難しい問題が解けないという状態に、慣れていく必要があります。
問題が解けずに、その都度、落ち込んでいたのでは――
身も心も保ちません。
社会は難しい問題であふれています。
――いかに生計を立てるか。
――いかに恋愛を楽しむか。
――いかに人脈を広げるか。
――いかに結婚を続けるか。
――いかに子供を育てるか。
――いかに老いに備えるか。
どれも難しい問題ばかりです。
簡単には解けません。
たぶん、終生、解けないものでしょう。
仕方のないことです。
だって、最初から、そういうものなのですから――
僕は、学校で哲学を教えたらいいと思っています。
道徳を教えるなら、哲学も教える――
――世の中には、わけのわからん問題が多くあるんだよ。
ということを、しっかりと教える――
子供が学校で数学の問題が解けなくて落ち込むのは――
他に解いてしまう子供がいるからです。
――あいつは解けるのに、オレは解けない。
となるから、落ち込むのです。
誰にも解けないことがハッキリしているならば、そんなことでは落ち込みませんよ。