マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

そのショーは続けられねばならぬ

 僕は、いわゆるTV番組は、ほとんどみないのですが――

 たまに、制作サイドの用意した予定調和が派手に壊れている様子が流れていると――
 つい引き込まれて見入ってしまいます。

 例えば――
 野外ライブを生放送で伝えるような番組で、自然災害の直撃をくらい、何とかライブをやろうにも、もはや物理的にできない――
 というような状況に追い込まれたときに――
 出演者や制作者たちが必死で番組をつないでいるような様子は、とても興味深く感じられるのです。

 そこには、人の息遣いが飛び交っています。

 当然です。
 番組は、当初の予定とは懸け離れた形で、進行されます。
 出演者も制作者も、あてにできるのは、自分のとっさのアドリブの応酬だけでしょう。
 とっさのアドリブほど、人の息遣いを生々しく伝えるものはありません。
 ひいては、その人の性格や信条までをも、活き活きと伝えます。

 よって――
 もし、出演者や制作者に十分な経験と力量とがあれば――
 下手なバラエティよりも充実したユーモアが楽しめます――
 下手な純愛ドラマよりも粋な演出が楽しめます。

 おそらくは――
 僕は、英語でいうところの、

 ――The show must go on.

 について、何事かをいいたいのでしょう。
 これを直訳をすれば、

 ――そのショーは続けられねばならぬ。

 となります。
 その修辞の装丁をひも解けば、

 ――多くの人たちが受け継いできた予定調和は無条件で守られるべきである。

 となるでしょう。

 自然災害で野外ライブの生放送がぶち壊しになったとしても――
 その日のために汗を流した人たちが大勢いるわけです。

 そういう人たちの努力を無にしてはならない――
 少なくとも人情的には、そのような結論に至るのが自然だと思うのです。