――性格俳優
という言葉があります。
一般には――
劇のキャラクターの性格を巧みに演じわける役者さんを指す言葉として知られていると思いますが――
自分の素のキャラクターを巧みに取り入れて演じる役者さんを指す言葉でもあるそうです。
20歳くらいの僕は、
――性格俳優こそ、真の俳優だ。
と考えていました。
ここでいう「性格俳優」とは「劇のキャラクターを巧みに演じ分ける」のほうです。
当時の僕は、「自分の素のキャラクターを取り入れて演じる」のほうは、邪道だと考えていました。
だから、「性格俳優」という言葉の二重性に、あまり注意を払わなかったのですが――
30歳をすぎて、人の個性の頑迷さを痛感するようになり――
次第に「自分の素のキャラクターを取り入れて演じる」のほうの「性格俳優」にも、興味がいくようになりました。
個性というのは、悪くいえばクセのことです。
人のクセとは本当に頑迷で、どんなに本人が頑張って隠しても隠しきれるものではありません。
(だったら、それを活かす役者さんがいても不思議はない)
と考えを改めたのですね。
どんな作品の、どんな人物を演じてみても――
結局は、どれも同じ芝居になってしまうような役者さんって――
いますよね。
でも、そういう役者さんの芝居が面白くないかというと――
ゼンゼンそんなことはなく――
鑑賞者の考えや気持ち次第では――
2種類の「性格俳優」のどちらをも、それなりに楽しめるのだと思います。