映画をみてきました。
押井守さんの『スカイ・クロラ』です。
『スカイ・クロラ』は、もともとは森博嗣さんの小説です。
それを押井さんが映画に仕上げました。
押井さんだと、つい気になってしまうのですね。
押井さんが手がけた作品は、どうしてもチェックをしたくなります。
黙って通り過ぎることができないのです。
何かが引っ掛かるのですね。
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映画の作品には2種類あると思っております。
視聴覚性に力点のある作品とメッセージ性に力点のある作品とです。
視聴覚性とは、簡単にいえば、映像や音声の組み合わせであり――
メッセージ性とは、鑑賞者によって感じ取られる主張です。
もちろん、実際には、視聴覚性だけでメッセージ性がないとか、その逆とかいうことはなく――
どの作品も、両方の性質を兼ね備えています。
強いていえば、どちらかに力点があるということです。
押井さんの作品は、メッセージ性に力点があると感じています。
作品に込めるべきメッセージが定まって初めて、その視聴覚的造形に注意が向く――
そういう映画の撮り方をする監督さんなのではないかと、僕は勝手に想像をしています。
映画の王道からは外れるのかもしれません。
視聴覚性の追求こそが映画監督の本分である、という思想は相当に強固なようです。
何よりも押井さん御自身が、ご著書の中で、そのような思想を支持されていたように思います。
が、なぜか、押井さんの作品からは、そういう思想が感じられないのですね。
むしろ、
――メッセージ性の追求こそが映画監督の本分である。
という思想さえ、感じます。
僕が押井さんに感じる引っ掛かりというのは――
そうした異質性なのでしょうかね。
映画界での異質性――
異質性をみつけたら、僕は放っておけません。
そういう性分なのです。
*
誤解のないようにいっておくと――
押井さんの作品の視聴覚性は超一流だと思いますよ。
メッセージ性に力点があるということは、視聴覚性が疎かになっているということを意味したりはしませんので――
『スカイ・クロラ』はバランスのとれた秀逸な作品だと感じます。