マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

どんな顔をすれば

 仙台の街に引っ越してきて14年になります。
 その間、ずっと同じアパートに住んでいます。

 アパートから歩いて5分くらいのところに、クリーニング屋さんがありまして――
 クリーニングは、この14年間、基本的には、そこでお世話になっています。

 いつも店番をしているのはお婆さんです。
 たぶん年齢は70代くらい――

 ときどき、中年の女性が店番をしています。
 たぶん、お嫁さんだと思うのですが――

 で――
 今日――

     *

 午前中の仕事を終え、昼過ぎに帰宅――
 ちょっと振込の用事があったので、その足で近所の郵便局に出向きますと――
 窓口の脇に、そのクリーニング屋さんのお嫁さんが座っておりまして――

(わあ、なんでこんなとこに?)
 と、一瞬たじろいでしまいましたが――

 僕にとって近所ということは――
 向こうにとっても近所なわけで――

 たぶん、先方も僕の顔を覚えていると思うのですよ。
 何しろ14年来の常連ですから――

 でも――
 互いに知らんぷり――

 一切、視線を合わせずに――

 まあ、やむを得ないところはあります。

 いつも店番をしているお婆さんとは、結構よく雑談をしますが――
 お嫁さんとは、ほとんど話をしたことがありません。

 互いに知らんぷりのまま――
 僕が先に用事を済ませ、窓口を後にする――

 お嫁さんは窓口の人と、なお話をしていましたね。

 で――
 僕は、ATMの用事を済ませるべく、今度は近所の銀行へ――

 スタコラサッサと歩いていると――
 先ほどのお嫁さんが、後ろから自転車でスーイスイ――

 よっぽど、そのときに話しかけようかと思いましたが――
 やめにしました。

 相も変わらず知らんぷり――
 話しかけるのが、なぜかマヌケっぽく思えたのですよね。

 で――
 銀行に到着――

 早速、ATMコーナーに向かったら――
 やっぱり、そこにはお嫁さん――
 一生懸命、操作パネルとニラメッコ――

 今度こそ話しかけようかと思いましたが――
 他にも大勢お客さんがいたものですから――
 相も変わらず知らんぷり――

 ……

 ……

 今度、そのお嫁さんとクリーニング屋さんで会うときは――
 いったい、どんな顔をすればいいんですかね。