大真面目で話をしているのに、どこか冗談っぽく聞こえてしまう人というのが、いますね。
話の内容が深刻であればあるほどに――また、話し手の口調が真剣であればあるほどに――
思わず笑いたくなってしまう――
こういう人には2種類あると思うのです。
1つは、本当に大真面目に話をしているタイプ――
もう1つは、本当は冗談のつもりで話をしているタイプ――
「本当に大真面目」のほうの人は、状況判断の能力に乏しく、場の雰囲気を掴むのが苦手なタイプですね。
話し下手で、話題が画一的――人との自由な会話を楽しめないタイプです。
「本当は冗談のつもり」のほうの人は、芝居っ気のある茶目っ気が豊かで、場を和ませるのが得意なタイプですよ。
話し上手で、話題が豊富――常にユニークな発想を蓄えているタイプです。
大学時代の先生に「本当は冗談のつもり」の話芸の持ち主がおられました。
同僚には常に一目を置かれ、若い職員や学生たちにも慕われている方でした。
いま、「本当は冗談のつもり」といいましたが――
ご本人に直接お訊きして確認したことではありません。
あくまでも想像です。
僕個人は、ほとんどお世話になる機会はありませんでしたので――
でも――
たぶん僕の想像は当たっています。
そういえば――
一度、お電話で話をしたことがあります。
講演を依頼したのです。
当時、僕は20代半ばで、お願いの言葉を要領よく述べるのが苦手でした。
しどろもどろに企画の説明をしていると――
「――で、僕は何て答えればいいんですか?」
と切り返され――
思わず笑ってしまったのを覚えています。
だって、そのお言葉の調子が極めて誠実そうであったものですから――
大学の偉い先生を相手に笑うのは大変な失礼であったはずですが――
でも、笑ってしまった、と――
あれから10年が経ち――
今日、その先生が最近になってお書きになったエッセイを拝読したのですが――
やはり、笑ってしまいました。
内容も文面も大真面目に仕上がっているのですがね。
なぜか笑ってしまう、と――
(この方は、いつも笑わそうと意識されているに違いない)
と確信するに至りました。