芸の世界には、どうしても国籍の枠に収まらない人が出てきます。
とくに、音楽とか絵画とかの世界です。
そういう人が、国籍の枠を破って高く評価されることがあります。
文芸の世界にも、そういう人はいるでしょう。
もっとも、文芸では言葉の壁の問題が無視できないので、そういう人が国籍の枠を破って評価されることは稀でしょうが――
国籍の枠に収まらない人というのは――
人間の普遍的な性質に迫っている人でしょう。
例えば、日本人とヨーロッパ人との違いとか、日本人と他のアジア人との違いとか――そういったことには関心がない――
ヨーロッパ人にもアジア人にも共通する性質に迫った芸を行っている人です。
そういう人の感性は、大変に貴重なはずなのですが――
概して、国籍の枠に無理に当てはめられているときは、周囲から奇人変人あつかいを受けるのが常です。
それくらいなら、まだよくて――
ときには深く疎まれていることすらある――
当然ですね。
例えば、日本という国籍に収まらない人は、日本の中で、日本人として共感することが少ないわけです。
周囲の日本人が煙たく思うのも当然です。
そういう人は、実は日本から飛び出したくて芸の世界に入っているように思えてなりません。